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会員店コラム

精神医療の今後

投稿日:2009年9月2日 更新日:

サトウ薬局  佐藤光子  aicon245.gif

 

うつ病や自殺が社会問題となっている。
当店でもストレスを訴える相談者は多い。

2月にNHKスペシャル「うつ病治療 常識が変わる」というのを見た。
精神科医、カウンセラー等は個々の技量の差がはなはだしく、適切な治療(投薬)を受けないとかえって悪化するという。番組によると、机とイスさえあれば手軽に開業できるとあって、勉強もせずに他科から鞍替えする医師も相当いるそうだ。

 

うつ病や自殺が社会問題となっている

うつ症状を呈する患者さんにもいろいろなタイプがあり「うつ病」だと思っていた患者さんを細かく検証すると実は「気分変調症」で、山ほど飲まされていた薬をやめて、別の一種類に替えるとすっかりよくなった例が紹介されていた。

日本の精神医療の貧しさを痛感した。

 

海外ではもはや薬に頼らずカウンセリングで治療しようという国家的試みがなされているという。イギリスで用いられている「認知療法」というものに興味を持ち、本を借りてきて読んでみた。

認知療法では、精神的苦痛の原因を「認知のゆがみ」、つまり物事を悪く取ってしまう「自分自身の考え方のゆがみ」ととらえ、考え方の「クセ」を修正することで症状の改善を目指す。言い換えれば、「病気を作り出すのは自分」だそうだ。

精神療法というと、過去の心の傷(トラウマ)について分析し、それを再構築して行くのがこれまでの方法だったが、認知療法ではそういった過去は切り捨て「現在のものの考え方」を問題とする。

 

個人的感想だが、どうでもいいことをくよくよ考え過ぎて自分を傷つけている人には有効だが、自分ではどうしようもない大きな問題や、理不尽な犯罪・いじめなど、自分以外に原因のある被害に苦しむ人にとって、根本的な解決にはならない。

通り魔に遭って亡くなった人に「あなたがここを通りかかったのが悪い」と言えるのか?

何事にも動じない心の在り方は悟りの境地といえるが、それを他者から強制されると「洗脳」という性格を帯びることを知った。

認知療法がずっと以前から用いられていたら、人間は機械化して豊かな感情を失い、あらゆる悲しみ、怒りから生じた芸術は存在しなかっただろう・・・。
ギリシャ以来のあらゆる悲劇、音楽ではブルースやロックさえも。

また、全てが患者の内面で起こる事という考え方は、外的環境と内部環境が常に関係・影響しているという中医学の発想とも相容れない治療法である。

画期的方法という触れ込みだが、いかにも西欧合理主義の産物という感じで安易に日本に導入されるのは疑問を感じる。

いったい今後の精神医療はどうなって行くのであろうか。

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