近年耳鳴りで悩む方の人口は年々増えています。
現代でも人口の10~20%耳鳴りを感じており、特に65歳以上では30%近く耳鳴りの経験があると報告しています。
一般に35歳頃から増加し、65~74歳をピークに以後減少しています。
音の信号は内耳の有毛細胞により電気信号に交換され脳に送られます。
有毛細胞にはうぶ毛のような小突起(感覚毛)があり、リンパ液の中へ伸びていて、有毛細胞は一度壊れると再生しません。
またヘッドホンやイヤホンなどで大きな音に長いことさらされていると、有毛細胞の損傷が進みやがて聴覚が失われたり、耳鳴りが起きたりします。
耳鳴りの原因は、
☆ 外因性 (頭部外傷、大きな音によって障害が起こる音響外傷、騒音など)
☆ 内因性 (化膿性内耳炎、ヘルペスなどのウイルス性内耳炎、耳垢栓塞、耳官狭窄症、滲出性中耳炎、鼻炎、蓄膿症、遺伝性難聴)
☆ 全身疾患 (高血圧、動脈硬化、腎不全、糖尿病、自己免疫疾患など内耳障害)
☆ 急性耳鳴り (突発性難聴やメニエール病)
☆ 非病気性耳鳴り (ストレス、睡眠不足、過労、二日酔い)
☆ 航空性中耳炎・気圧性中耳炎
☆ 筋肉の痙攣による耳鳴り(中耳の筋肉や耳周囲の筋肉が痙攣することで聞こえる耳鳴り)
☆ 薬物性耳鳴 (ある種の抗生物質、抗結核薬、抗がん剤、睡眠薬、抗うつ剤)
など様々あります。
耳鳴りには病的な耳鳴りと生理的な耳鳴りがあり、病的な耳鳴りは難聴とともに出現することが多く明確な原因は不明です。
病院を訪れた患者は80~90%程度の割合で何らかの難聴を伴うと報告されていますので、まず一度は耳鼻咽喉科を受診し、鼓膜の診察と聴力検査を受けることをおすすめします。
突発性の耳鳴りにはステロイドの内服や点滴、高気圧酸素療法などの治療があり、慢性化の耳鳴りには鎮痛剤、ビタミン剤、血管拡張剤を使いますが、なかでも漢方薬の対症療法は効果的です。
ある程度苦痛を和らげ、日常生活に支障をきたさない程度に抑えることができます。
漢方(中医学)で考える耳鳴りには病因物質によって起こる耳鳴り「実」と、基本物質の不足によって起こる耳鳴り「虚」に大きく分かれ、「実」は突然起こること多く、音も大きく、症状は激しいのが特徴で、どちらかというと若い人におおくみられます。
「虚」は徐々に始まり、かすかな音が断続的に聞こえるのが特徴で中高年によくみられます。
「実」は、ほとんどは直接的には病因物質によって起こっていても、根本的は内臓機能の衰えにある「本虚標実」タイプといえます。
「虚」はほとんどの場合、腎気(腎の精と気)の衰え「腎虚」と密接に関係しています。
耳は経脈によって腎と直接つながっており、ほとんどの耳鳴りは腎の機能の衰えが前提条件になりますが、腎以外の内臓の状態も耳の機能に影響します。
「実」や「虚」にも各症状、各体質別に分かれ、いろいろな漢方薬があります。
また、めまいも同様、病因病機によりさまざまな漢方薬があります。
詳しくは埼玉中医薬研究会会員のお店でご相談してください。
(本文は平成23年7月24日に行われた、中国で内科、耳鼻咽喉科がご専門であるトン選甫(とんせんほ)先生の講演内容をもとに編集したものです。)
文責 松永知子