鍼は痛い 灸は熱い と思われているのが、おそらく一般の人々の鍼灸治療に対するイメージでしょう。
ところがそれどころか、鍼の場合は治療を受けていてむしろ気持ち良く、治療終了後には爽快になる、というのが鍼灸治療を受けた人の感想です
私の師小野文恵先生(故人、元東方医学鍼灸臨床研究会会長)は爽快な鍼が出来る達人でした。
何故爽快かと言うと師は接触鍼法の名人であったからです。
鍼は刺すもの、刺さねば効かないものという概念が一般の人々、否治療家においても?の通念であろうかと思われますが、師は皮膚上に針を接触させ 流麗なタッチで針を運用しておりました。
その手さばきは誰も真似でいない正に国宝級の技であったのが、今でも脳裏に深く焼きついております
師から治療を受けた患者さんが一応に言っていた受療観は治療を終え、会計を済ませ外に出、歩きはじめたところで、受療の効果が分かり始まり 全身が芯から爽快になるというものでした。
師の接触針法は9種のやり方を自在に駆使しておりましたが、鍼を刺入せず接触させるだけの手法でも異なった9種の技術を運用していたものですから、 治療後は心身が爽快になるのはむしろ当然の事だったのかも分かりません。
接触針法が何故効果を上げるのか理論的な事は少し難しくなるので、ここでは触れませんが鍼灸の理論の基本が個人の患者の体質、体力、又肉体に 現われている種々の病症に対して適切なドーゼ(刺激量)を与えるという事ですから、刺入するだけが治療効果を上げるだけではない事がよくお分かりでしょう。
一方灸はと言うと普通は透熱灸と言って半米粒大に丸めた艾を経穴(ツボ)に置き焼きこむやり方が一般的なのですが師のやり方は知熱灸と言って艾を ピラミッド状に固め経穴(ツボ)に置き、点火し受療者が熱いと感じたところで取る、従って殆んど熱さを感じず灸痕も残さないやり方でした。灸痕を残すとその皮膚下の気の巡りが悪くなるので透熱灸はめったにやらないのが師の考えでした。
いかがですか。鍼灸のイメージがかわったでしょう
私も現在、師の接触針法、知熱灸を運用し、日々の患者さんの施術にあたっておりますが、 自立神経系の病を中心とする「気(分)の病」は接触針法とわずかの刺入針法を運用するだけで、充分効果を上げ得ると確信しております。
この様に技術が卓越した鍼灸治療は爽快なものであるだけでなく、免疫学者安保徹先生が言われている如く副交感神経を刺激し、免疫細胞であるリンパ球の 数を増やし、体を回復へと導く高度な治療なのです。
尚、鍼灸の効果、その他の事についてもっと知りたい方は、社団法人日本鍼灸師会のホームページ(一般の方へ、http://www.harikyu.or.jp/)を見られる事をおすすめします
鍼灸のよもやまばなし ~鍼灸の治効~
投稿日:2007年6月1日 更新日: